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「何もかも憂鬱な夜に」中村 文則 [BOOKS…「魔女の本棚」]


何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫 な 54-1)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫 な 54-1)


初出:2009年3月集英社刊

歯医者の予約までに1時間あったので、銀行に行って、それからよせばいいのに本屋に入った。気になっていた単行本と、言葉関連の本2冊、そして文庫の新刊。単行本をガンガン買うわけにいかないので、やはり文庫は貴重だ。
そして平積みになっていた新刊のなかに、この作品があった。

ちょっと安易なタイトルじゃないか?
帯に巻末の解説を書いた若手芸人の顔写真と名前。あぁ、ウチの末っ子が好きだったな。
作者は芥川賞作家、芥川賞と言うと観念的な作品が多いけれど、若者向けで読みやすいなら、日々己の怠惰との確執で悩んでいる末っ子に読ませようか。とりあえず先に読んでおこう。
しかしこの〈軽さ〉は、あっさりと覆される。

物心ついて成長期に至り、人は、余程幸せな境遇でなければ、「本来自分は何者なのか」と思い悩むことだろう。
何かのおりに繰り返し思い起こされる原体験あるいは原風景。記憶の混乱。
自分の心の中にある埋まらない空虚。
施設出身で刑務官をしている「僕」の内にある何物かを受刑者たちは敏感に感じ取る。
同じ種類の人間だ、と。
友の自殺、受刑者・死刑囚との関わり、まとわりつく死のイメージ
死刑制度については思うところ大ではあるが、この際是非は置いておこう。
われわれはすべからく「命」を持っている。
また、命あるものには必ず「死」が訪れる。

まだ大人になりきれていない「僕」が、虚無感に日々苛まれても踏みとどまれる力。それを与えたのは施設長の包容力だろうか。かつて「救われた」ことのある人は、誰かを「救う」ことを望む。為すすべもなく救えなかった過去が、それを後押しする。「僕」は「彼」に言う。

『命は使うもんなんだ』

その「命」は何ができるか。
この世に生を受ける、と言うこと。
何故生まれてきたんだろう、そんなことを考える前に。
目の前が、開けた気がした。
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