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映画「落下の王国」 [VISUAL&ARTS…観る。]

原題 The Fall (2006 アメリカ
監督:ターセム 主演:リー・ペイス

世界遺産を舞台に鮮やかな色彩の乱舞。
すべてロケという、CG全盛の世の中に、金より大事な「時間」を掛けた贅沢な映画である。

よく次に観る作品を選ぶときに、映画館での予告編やフライヤーで目を引くもの、となるのだが、この作品は、なぜか前情報が得られなかった。上映館情報でタイトルを見かけ気になって、邦題だけで19世紀ころの不条理系ファンタジーかな、という薄いイメージを持った。去年観た「パンズ・ラビリンス」のような残酷な美しさを持つ作品かな、とも。しかし、似ているようでちょっと違う、カラッとした色彩鮮やかな空想世界が目の前に…。

舞台は1915年アメリカ。物語はとある娯楽映画のロケ中の様子から始まる。失恋の痛手から自棄的になり、高所より<落下>した際、復帰も危ぶまれる大怪我をしたスタントマン・ロイ。撮影中の映画の場面と現実の事故の様子が入り混じるのはこれから先の物語の暗示か。不思議ファンタジー?との先入観がまず軽くいなされる。
本編は入院先の大きな病院へと場面を移し、腕を怪我した少女アレクサンドリアを中心に物語が進んでいく。父を失い移民としてオレンジ農園で働く母のもと、彼女は5歳にもかかわらず収穫の手伝いに木に登り、そこから<落下>したのだ。
好奇心旺盛な利発な少女は、腕の怪我ということもあり、じっとしていられない。探検ごっこのように病院内をうろうろし、お気に入り看護師に書いた手紙を2階から<落下>させてしまい、探しに降りたところでそれを拾ったロイに出逢う。想像力豊かなアレクサンドリアと遣り取りするうち、動けないロイは自殺の企てに彼女を利用するために、彼女の気を惹く「物語」を始める…。
「物語」はまったくのロイの思いつきだ。それをアレクサンドリアが頭の中で補完していく。豊かな空想力は、語り手にも還元され、やがて「物語」は共有されていく。

鮮やかな映像はアレクサンドリアが思い描いている世界である。なんでもありな空想世界なはずだが…美しい現実離れした舞台(ロケ地)が実は世界各地に現実にあるものなのである。また、語られる物語は整合性など無縁な思いつきによる荒唐無稽なものなのだが、そこに幼いながらに辛い経験をもつ彼女の記憶がトラウマのように投影され、「死」のイメージとともに残虐性をも帯びるリアリティが追加される。それが煌びやかさとは違う乾いた美しい鮮やかさを下地のように際立たせるのだ。

「物語」は死を焦るロイの苛立ちやアレクサンドリアの戸惑いとともに思わぬ方向に展開していく。
しかしアレクサンドリアの再度の<落下>を機に、ロイの中のわだかまりが解けていく。
空想の「物語」の中にも<落下>のモチーフは散見される。しかし、言葉に囚われて不条理に突き進むことなく、明るいアメリカの空の下、物語は幕を閉じるのだ。アレクサンドリアの無垢な笑顔を残して。


映画公式サイトはこちら
2008.9.28現在、東京近郊では上映が終わってしまいましたが、まだ観られる地域もあるようです。
是非映画館の大きい画面で観てみてください。
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