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ミュシャ展 [VISUAL&ARTS…観る。]

東京都美術館(2005.1.27~3.27)

最終日に近い25日の午後。学校が終業式というのも相成って入場制限こそ無かったがかなり混雑していた。それだけこの日本ではミュシャの人気は高い。
19世紀末、パリのベル・エポックの寵児として一夜にしてもて囃された彼の代表作はやはり1900年前後の今様に言えばグラフィックデザインの業績の数々と言えるだろう。今回の展覧会の副題も「プラハからパリへ 華麗なるアール・ヌーヴォーの誕生」と銘打っており、展示も会場中程の吹き抜け階段下に鎮座した出世作、サラ・ベルナールのための大きなポスター数点をクライマックスのように配置している。
アール・ヌーヴォーの華、と言われるミュシャの前にも多くの成功した商業芸術家たちはいたであろうが、絵画においては彼が第一人者としてその代名詞ともなったのは、ひとえにそのグラフィックデザイナーとしての卓抜なセンスによるものだろう。時代は世紀末、おりしも博物学の隆盛と時を同じくしている。人工的なものか発達するとともに自然というものが知識として人々の好奇の目に晒され、数多くのカタログが発行され始めた奇想の時代。アール・ヌーヴォーと言う芸術のカテゴリーが自然の造形をテーマにデザインされていったのもそんなことが背景となっていたに違いない。伝統的なアラベスク文様のような装飾様式への回帰はまた世紀末の退廃とも無縁では無かったろう。日本の元禄時代や江戸町人文化のように閉塞感から湧き出る徒花の文化。そんな「装飾の時代」に描かれた彼の作品の、極めて装飾化されているにも関わらず一方でリアルな女性と植物の作り出す優美な曲線は観る者を捉えて離さない。もちろん造形だけでなく色彩感覚も卓抜している。今に通じる、というより、現代の配色のスタンダードを作った、と言ってもいいのではと思うくらいである。
この後のグラフィック界において、彼の影響はとんでもなく大きいものだと言えるだろう。この日本の中でもあまたのグラフィックデザイナーやイラストレーター・漫画家がミュシャ様式をコピーしていることからも分かる。(もちろん私も影響されたひとりである。)

 今回混んでいるのは分かっていてわざわざ観に行ったのには理由がある。すでに1度比較的大規模なミュシャ展('83)を観ていた私は、もともとそんなに乗り気ではなかったのだが、突然肉筆の絵が観たくなったのである。リトグラフ作品だけでなく、直にキャンバスに描いた絵を。成功した商業美術としての作品と比べ、評価はすでに「無審査状態」の晩年の作品を観ていると、描きたいものを描いているというのが伝わってくる気がする。年表を見ると、商業的大成功を収めたのが30歳代後半。それから約10年くらいの間に精力的に数々の脂ののった作品をものしつつ、独立運動に触れ、スメタナを聴き、民族への拘りを持った彼は資金稼ぎのために渡米する。40にして惑わず。それまでを地固めとして自らの信じる道を進んでいった彼の軌跡に学ぶべきものを見つけた、と思える作品たちとの再会でもあった。

~魔女の本棚より~
「装飾の神話学」鶴岡 真弓(河出書房新社)


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